New Horizonsの教主は強いのか。
メタゲームの要素を無視してこの問いに無理やりYesかNoで答えるなら、Yes。強いに決まっている。
さらに付け加えるなら、自分がNew Horizonsに教主を入れない理由は、「教主は確かに強い。だが、入れる必要は無い。」と言うのが7割。残り3割は最後に。


強さに関しては下の段落で文字数を使って文章化を試みるが、何故必要ないのかに関して。
主観的に「自分がこのデッキを使ってみて必要性を感じなかった」、客観的な「教主無しでDavid Priceが残してきた数々の実績やその他のプレイヤーによる結果」の2点による。

テンポに焦点を当てたデッキと教主の相性は良く、David Priceの最初のリストはMox DiamondとCrucible of Worldsが入ったコントロール重視のもので、そこから教主入りのテンポビートダウンへと発展し、そして教主無しの現在の形になった。

誤解を招かないために公正な意見を述べておくが、教主入りのリストから教主無しのリストへの「変化」は必ずしも「進化」・「発展」ではない。David Priceが実践での経験とメタゲームから、教主を取り除いてStifleを入れた方がこの環境でさらに勝てると判断しただけだ。教主を抜くことによってそれまでよりも不利になるマッチアップがあっても、そのマッチアップで依然勝率5割以上を保て、Stifleを入れることによって不利だったゲームの勝率が上がり、メタゲーム上の各デッキとのマッチアップ率と勝率をかけた時に最も数字が高くなるのが今のリストだということだろう。
教主入りのリストが十分強いのは、David Priceや、国内ではくーやんさんが、教主入りのリストで残した実績を見ても明らかだ。



New Horizonsとはどういうデッキなのか。
このデッキが勝負をするステージは3段階に分かれている。
1段階目は「テンポ(面倒だし、ここではそれほど問題にならないのでテンポの定義はしない)」のステージ。Stifle、Wasteland、Daze、Force of Willで相手の行動を妨害し、タルモゴイフでゲームを支配して勝利する。
White Tempo Thresholdのmossivo1986は、「Wasteland単体ではテンポを得られない」と言っていたが、半分は間違っている。相手の手札の何割かを使用不能にし、使用できるスペルの何割かをDazeの支配下に置く。これだけで十分なテンポを獲得できるのだ。
このステージにおいて、教主は非常に役に立つ。上に挙げたカードによる「相手の展開を妨害することで得られるテンポ」に加え、mossivo1986も述べている、教主によるマナベースの展開とのシナジーにより、得られる相対的なテンポが飛躍的に大きくなる。
また、相手からのマナベースへの攻撃に耐性がつくことも重要なメリットで、テンポのステージに焦点を当てたデッキにおいて教主は非常に強力だと言える。

2段階目は、「ボード」のステージ。攻撃できるクリーチャーを戦場に用意するのがこのステージで、以前は自分のタルモゴイフを守りながら相手のタルモゴイフを除去するステージだった。
今では賛美システムの導入により、除去を使わずとも相手のタルモゴイフを越えて攻撃できるようになり、教主にバックアップされたQPMは序盤のタルモゴイフを上回る4/4と言うサイズで攻撃を行える。
このように、このステージにおいて教主の賛美能力は有効で、バントデッキにおける教主は、第1ステージでマナ能力を、第2ステージで賛美能力を活用できる非常に強力なカードだと言える。
だが、New Horizonsというデッキがこのステージに革命をもたらした。賛美システムや除去が無くても相手のクリーチャーを乗り越えて攻撃を行える聖遺の騎士とテラボア導入し、このステージではリアニメートデッキを除けば(リアニメートされたクリーチャーのサイズを越えることも良くあるが)環境最強のデッキになったと言っていいだろう。

クロックパーミッション、スレッショルド、テンポ、Aggro Bantなどと呼ばれるデッキの多くは、第1ステージでのハメ勝ちや第2ステージでカードをフルに使って勝つために構築されている。
だが、New Horizonsにはそれらのデッキには無い第3ステージがある。「I win」と書かれたカードを引くステージだ。
元からカウンターや除去を多く搭載したコントロールデッキとのマッチアップや、たまたま相手にカウンターや除去、サイズの大きいクリーチャーを固めて引かれてグダった時に、上記のデッキよりも多く積まれたBrainstorm・Ponderのフルセットに加えて4枚のCanopyで、やはり多く積まれているクロック11枚を探すことが出来る。そして、このデッキを特徴付けている聖遺の騎士とテラボアはどちらも、除去できなければ1枚でゲームを終わらせてくれる。先に挙げたデッキでも、このステージでも役に立つVendilionを2枚程度入れているリストも多いが、このデッキのテラボアと比べてしまうとその強力さ・信頼度は段違いだろう。

New Horizonsにおける教主は第1ステージではやはり非常に強力だが、第2ステージではおまけ程度でしかなく、第2ステージと第3ステージだけを見るなら4枚目のテラボアや追加のキャントリップの方が良いように思われる。
だが、第1ステージでのブン回りハメ勝利を増やすことは、第3ステージやその先のステージを得意とするデッキ相手には有効な手段の一つであることは疑いない。
教主を入れるか否かはデッキを使用するプレイヤー次第になるのだろうが、教主はデッキの強さの上限を押し上げ、教主を使わず他のカードをフルセットにするのはデッキの強さの下限を引き上げると考えられる。

自分はNew Horizonsの「1枚で勝利できるレベルのクロックの数を増やし、クロックへアクセスするためのキャントリップも増やし、安定感を高めた」構成が非常に気に入っていているため、教主抜きをプレイする。
仮に教主を入れるなら、成功するかどうかはともかく、先ずは土地2枚と爆薬2枚を教主4枚に替えてプレイテストを行うと思う。デッキの基本パーツの枚数が減り動きのランダム性が増えるのを好まないからだ。
これが決着ターンの遅いデッキであれば、当然ドローステップの数は増えるし、デッキの構成もドロー手段を入れた形になるであろうから、各カードの枚数が3枚や2枚に減ってもランダム性は抑えられるので話は別なのだが。
冒頭に挙げた「教主を入れない理由の残りの3割」は、ブン回りのパターン・回数が減り、教主がいないことによって勝率を落とすマッチアップがあるというデメリットよりも、デッキのランダム性を減らして安定性を高めることで全体的に勝率が上がるメリットの方が大きい、ということだ。
本音を言うと、自分ぐらいのプレイ回数ではデメリットとメリットのどちらが大きいか判断するには経験不足だと思っている。単純に言ってしまえば、教主入りのリストよりも教主抜きのリストの方が勝っても負けても、特に負けた場合に納得がいくという感情的なものなのだろう。その感情を形成する基になっているのは、こうやってダラダラ書いた文章の中身ではあるのだけれど。

全く別のデッキに話が変わるが、U/W Tempo(No Goyf)の各カードの枚数は素晴らしい。回す度に「正しい枚数だ」と思える。

コメント

くーやん
2010年6月23日0:22

いつもすばらしい記事をありがとうございます。
教主はほんとに好みだと思いますww
関西ではミラーやゴブリン相手に必要なので採用していますが結局はメタ次第ですかね。
僕もニッセンで使うレシピに教主を入れようか悩んでいますし。

rain
2010年6月24日17:52

ありがとうございます。
これだけ行数を書いても、自分の考えていることを全て文章に落とすのは無理ですね。自分で読み返してみても言いたいことと書いてることじゃニュアンス変わってしまっているし。

バントカラーの1マナスペルは本当に悩みます。

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