レガシーのPoxデッキがいつ頃から存在するかは知らない。
レガシープレイヤーなら、海外の小さい大会のトップ8にBG PoxやBG Loam Poxと言うデッキを見たことがある人は多いと思うし、「Eva GreenをクリックしたらLoamとSmall Poxが入ってた」なんて経験をしたことのある人も多いと思う。

最近のSCGでPoxが少し流行っているのは、昨年12月に開催されたSCGインビテーショナルのレガシーで、Reid DukeがPoxデッキを使って3位になったからだと思われる。

Reid Dukeといえば、レガシープレイヤーにはお馴染みのRUG Orderデッキの完成形を流行させたプレイヤーで、SCGレガシーオープンだけでなく昨年5月に開催されたGP ProvidenceでもRUG Orderを使い、1200人近い参加者の中で3位に輝いている。

SCGのサイトでもレガシーだけでなく様々なフォーマットの記事を書いている理論派プレイヤーであり、Poxデッキにも彼の構築理論が活かされている。




Introducing Mono-Black Pox In Legacy
By Reid Duke
12/19/2011

http://www.starcitygames.com/magic/standard/23288_Introducing_MonoBlack_Pox_In_Legacy.html


今週末にCharlotteで開催されたSCG Invitationalで、3位になったよ。スタンダードではWolf Run Ramp Podデッキを使ってトップ8に残り、レガシーでもスイスラウンド5-1-1の成績を残すことができた。


Pox
2011-12-11
Reid Duke

Maindeck:
2 Nether Spirit
4 Dark Ritual
1 Spinning Darkness
3 Innocent Blood
4 Inquisition of Kozirek
4 Smallpox
4 Sinkhole
4 Hymn to Tourach
1 Pox
1 Nether Void
4 Liliana of the Veil
3 Cursed Scroll

13 Swamp
4 Urborg, Tomb of Yawgmoth
4 Mishra’s Factory
4 Wasteland

Sideboard:
2 Extirpate
2 Spinning Darkness
2 Perish
4 Engineered Plague
1 The Abyss
2 Leyline of the Void
2 Pithing Needle


友達からどんなデッキを使ってたのか聞かれたら、「黒単コントロールだよ」て軽く答えるつもりだよ。でも、この言い方はちょっと誤解を招くよね。
Poxは確かに、黒単で、遅くて、コンボじゃない。でも、最近使われてる意味での「コントロール」とは全然違うよね。「コントロール」デッキは、序盤を凌ぐためのディフェンシブなカードや、カードを引くためのカードや、そしてゲーム終盤に対戦相手の息の根を止めるための強力なフィニッシャーを使ってる。こういったカードは、Poxには1枚も無いよね。



戦略:リソース否定
Poxはリソース否定デッキなんだ。カードデザインの傾向がどんどん変わってきたのが大きな理由なんだけど、この数年間リソース否定戦略デッキはスタンダードやエクステンデッドでは存在できなかった。この戦略のデッキは、勝ち手段は非常に単純なものにする一方で、戦略的には相手を干上がらせようとし(これは複雑だし、欲張りすぎだろうね)、さらに最初に相手のゲームプラン遂行を妨害しようとする傾向にある。

手札破壊に特化したデッキは、相手のトップデッキに対する弱さと言う点からは免れ得ない。土地破壊に特化したデッキは、防御手段が足りない。でも、Pox(Poxというデッキもカードも)にはリソース否定戦略が凝縮されているんだ。だって、同時に全てのリソースに対して攻撃するんだからね。
対戦相手は、手札だろうが場だろうが関係なく、自分のカードを安全な枚数保持しておくことができない。
Poxを倒すための簡単な方法は無いんだ。同時にあらゆる方向から攻撃を仕掛けてくるからね。

Pox側の狙いは、ゲームを「トップデッキ待ち」までもつれさすことだ。このプランの採用を許容できないプレイヤーは多いよね。だって、ゲームを掌握してるのに相手のラッキーなトップデッキで負けることがあるんだから。
理解しなきゃいけないのは、Poxはそういった「トップデッキ待ち」状態で大きなアドバンテージを持つデッキだということなんだ。必要マナは少なく、勝利手段は軽く、そしてデッキ全体が対戦相手の引くカードの大部分を無効化するように構築されている。



対戦相手のトップデッキを無効化しろ
レガシーのよくあるデッキ、クリーチャーと除去とカウンターを使った3色の中速デッキとの対戦を例に挙げてみよう。
Poxデッキは、お互いの手札を空にできる。そうすると次に何が起きる?対戦相手が引くカードは、土地――脅威にならない、除去――使い道が無い、カウンター――使い道が無い、クリーチャー。以上のどれかだ。
Poxデッキは、トップデッキされたクリーチャーを軽くあしらえるように武装されている。Liliana of the VeilとCursed Scrollはどちらも、トップから降ってくるクリーチャーから身を守ることができる。おすすめしたい構築は、メインに9枚、サイドにさらに追加の除去を積む、というものだ。

「トップデッキ待ち」状態では手札破壊スペルの使い道が無いじゃないか、という批判がよく為されるけど、手札破壊過多の構築は「もはや使い道が無いカード」(さっき説明した除去やカウンターだね)を、「死にカード」に簡単に変える事ができる。
もちろん、Swords to PlowsharesはNether SpiritやMishra’s Factoryを除去することが可能なんだけど、テストプレイではそんなケースは無かったね。
Pox側のクリーチャーは、相手の手札が無くなるまで亀のように快適で安全な甲羅の中に閉じこもり、安全が確認できてから仕事に取り掛かることができるんだ。砂浜の安全が確認できるまでNether Spiritという亀を場に出すことを「忘れる」のは、全く合理的だね。

上の例は、引いたカードをプレイできるだけの土地があるという、対戦相手にとっては有利な前提なんだ。実際はそんなケースは滅多に無いんだけどね!
Wasteland、Sinkhole、Samllpox、Pox、手札破壊、そしてレガシー特有のデッキ内土地枚数の少なさなどを合わせると、対戦相手に土地事故を起こさせるのは簡単だよね。
Knight of the Reliquaryは強力なトップデッキかもしれないけど、キャストできるマナが無ければ、Inquisition of KozirekかLilianaの+1能力のカモだよね!



対称的効果
Poxは、気持ち良い勝ち方をするわけじゃない。対戦相手を動けなくし、死んだ動物に対して猛禽類が行うように、Nether SpiritとMishra’s Factoryが対戦相手を嘴でつつくのを見守るだけだ。
他のフォーマットでは、Grave TitanやCruel Ultimatumなどといった重くて派手な勝利手段が使われるけど、Poxでは有り得ない。Innocent Blood、Smallpox、Pox、Lilianaの能力などがお互いのプレイヤーに対して等しく作用するので、このデッキは最小限のリソースで機能するようにしておかないといけないんだ。

Poxに1つだけ推進力があるとすれば、それは強力で対称的な効果を利用できるということだろうね。
Smallpoxはたった2マナで3枚のカードを奪うことができるんだけど、他のデッキだとキャストする側への損害を許容できないから、このカードを使うことができないんだ。
でも、Poxデッキはとても少ない土地でも動くことができる(これが単色にする理由の1つだね)し、躊躇わずに手札を空にすることができる。これは、Nether Spiritが墓地に行き、Cursed Scrollが有効になり、Lilianaの+1能力をデメリット無しで使えると言うことだからね。



デッキリスト
Liliana of the Veil:
いつもなら最高のカードは最後に取って置くんだけど、彼女は素晴らしすぎるから最初に書いちゃう。このカードについては2回書いちゃう。
このカードはまるで、僕がPoxデッキに取り組んでいることを知った誰かが、わざわざ僕のためにデザインしてくれたカードみたいだね。このデッキは彼女無しでも良い動きをするよ。でもLilianaを引けば、全てがもっともっと捗るんだ。
彼女をサポートするための除去がたくさんあるおかげで、彼女を殺すことは不可能に近く、Dark Ritualのおかげで1ターン目に御目見えする事さえある。
Lilianaと戦うプレイヤーは、手札を保持しておけないばかりか、一度に展開したクリーチャー全てを生き残らせておくこともできないから、Lilianani対して有効なオプションを採れないんだ。

通常、Lilianaの+1能力を使うことになり、できるだけゲームの早い段階に行うことで対戦相手が得られる情報は最小限になる。でも、レガシーではフラッシュ持ちのクリーチャーがたくさん使われているから、それらには十分注意しないといけないね。
例えば、相手がIslandを3枚全てタップしているなら、Liliana+1の能力を起動し、Nether Spiritを捨て、その後でSinkholeをIslandに対してプレイする。こうすることで対戦相手にVendilion Cliqueを手札に残させ、そのすぐ後にはVendilionをキャストできなくなったことに気付かせるんだ。
でも、そのIsland3枚がアンタップ状態の場合は、先にSinkholeをプレイしてVendilion Cliqueのキャストを強要し、その後でVendilionを処理するLiliana-2の能力を起動することになる。

マナ:
Wastelandについては考えるまでも無い。もしこのカードからマナが出ないとしても、このデッキのスペルの中で最高位に位置するね。Mishra’s Factoryは勝利手段として、そしてクリーチャーからの防御手段として、両方でとても重要だ。

これらの土地はとても強いけれど、これだけ多くのダブルシンボル(トリプルまであるね)のスペルを抱えるデッキにおける8枚もの無色マナソースは、確かに多いね。そういう訳で、Urborg, Tomb of Yawgmothがデッキに入ったんだ。
毎ゲームUrborgを1枚引けるというのは、とてもとても素晴らしいね。確かに「Legendary」だけど、複数枚引いてしまうことは全然問題じゃない。だって、Smallpoxで生贄に捧げたり、手札を捨てる必要がある時に投げてしまえば良いんだから。
インビテーショナルで実際にあったことなんだけど、あるゲームで2回のPoxの後に、Urborgが4枚全てほぼくっついてる状態で自分の墓地に並んでることがあったよ。4枚全部引いちゃってることに気付いてなくて、おかげでそのゲーム中ずっと不便な思いをしたよ!

Dark Ritualはかなり長いこと試行錯誤したけど、結局デッキに入れることにして、結果として一番活躍したカードだったね。
1ターン目のLilianaや2ターン目のHymn+Sinkholeといったイカレた展開を可能にするだけじゃなくて、あらゆるシーンで本当に強いカードだった。
このデッキは、1ターン目にプレイできてボードに影響するカードがほとんど無いので、相手の速い展開に対して後手に回らないためにもRitualが重要になる。
対戦相手にKnight of the ReliquaryやJace, the Mind Sculptorのキャストに必要な土地を集めさせず、Hymnの被害から逃れようとして手札を使い切らせないということは、とても重要なんだ。
ゲーム後半にCursed Scroll起動のために使うDark Ritualには魅力を感じないかもしれないけど、Cursed ScrollがDelver of SecretsやLord of Atlantisを排除し続けるなら、Dark Ritualの分もディスアドバンテージにはならないよね。

僕が挙げたりストにマナソースが多いのを変に感じるかもしれない。サイドボード後のオプションも含めると、このマナベースにする必要があったっていうのがその理由なんだ。
特にBUGデッキやミラーマッチなんかの消耗戦になる対戦では、Dark Ritualのカードディスアドバンテージは許容できず、サイドアウトした方が良い。でも困ったことに、こういった相手側のデッキにもWastelandが入ってることが多い。そんな訳で、普通はDark Rituakが入ったデッキだと土地が23・24枚でも多いのに、インビテーショナルでは25枚もの土地が入ったデッキを使ったんだ。

赤単のように土地が全て基本土地のデッキに対しては、Poxに必要なのは黒マナだけだし、無色マナは意味が無いことも多いので、Wastelandは4枚全てサイドアウトして構わない。
普通のマッチアップだと、サイドボード後にDark Ritualを残すのであれば、1・2枚のSwampをアウトしても大丈夫だね。

Merfolk相手にとにかく必要なのは、WastelandやDazeやSpell Pierceに対してEngineered PlagueやLilianaを通すためのマナ、マナ、マナなんだ。
これが、メインデッキに多めの土地を用意しておいて必要無ければサイドアウトする、という戦略がレガシーで有効なもう1つの理由なんだ。Poxじゃなくて他のデッキでだって、この戦略は採用できるだろうね。

手札破壊:
テストプレイの始めは、とても多くの手札破壊を入れていた(Inquisition、Thoughtseize、Duress)けど、デッキについて理解すればするほどこれらは減っていった。手札破壊を入れすぎると、弱いドローが多くなってしまって、このデッキのそもそもの目標である「トップデッキ待ち」状態にして勝つ、という部分に全く信頼性がなくなってしまうんだ。
実際問題としては、このような単体手札破壊カードはレガシーじゃ面白くないっていう単純な理由もあるね。最大の効果を発揮する場合でも、相手がマナを使う必要の無い1対1交換で、最低の場合はBrainstormやSensei’s Divining Topであしらわてしまう。
でもInquisition of Kozirekだけは、1マナのカードが不足しているこのデッキでは必要悪なんだ。早急に対戦相手を妨害する必要があるし、さもなければ押し潰されてしまうリスクを背負うしかない。ストームコンボ相手にHymnをプレイする前に負ける必要は無いよね。

一方でHymn to Tourachは、非常に強い。カードテキストに書かれている以上のことをここで説明する必要は無いよね。土地を落とすこともあるし、カードを落としそこなうことは無いし、いつだって相手にForce of Willを使わせたような効果を得ることができる。

除去:
Innocent Blood、Smallpox、Pox、Liliana of the Veilといったラインナップは、確かに生贄効果ばっかりだね。僕のデッキリストだと、1ゲーム目にクリーチャーホード戦略に対して負けてしまうのは仕方ないけど、そのためにサイドボードにEngineered Plagueを用意してある。
インビテーショナルのレガシーで負けたゲームのうち1つは、相手のKnight of the Reliquaryに対して対象を取る除去が無く、速やかに踏み潰されたものだった。でもこれは、2体のNoble Hierarchを含む強力なバックアップがKnightを支えていたという、とても極端なケースなんだよね。
普通なら、相手がゲーム中にプレイするクリーチャー達を、文字通り全滅させるのがどんなに簡単なのか、驚いてしまうぐらいなんだけど。

フィニッシャー:
Nether Spiritはこのデッキだと信じられないような働きをするよ。毎ゲーム引けるように4枚入れておけば良かったと思ったぐらいだけど、複数枚引くのは危険なんだよね。
SmallpoxかLilianaで捨てた場合、最悪のケースでもSwords to Plowsharesで除去されるぐらいで、これでもまだ0対1交換なんだよね。最高のケースは対戦相手が回答を持たず、こいつが相手を殺してくれることだね。
このカードは、15/15のKnight of the Reliquaryや2/2の群れを止め続けることもできるね。

Cursed Scrollはいくつかのマッチアップでは要らないカードなんだけど、最低でも信頼できる勝利手段にはなってくれる。
MerfolkやGoblinsやDelverのようなウィニーデッキにとっては恐ろしい脅威になり、ゲームをロックする完璧な手段になる。部族デッキを相手に体勢を整えてしまえば、相手のデッキにはScroll起動を生き延びられるクリーチャーは存在しない。
大き目のクリーチャーを使ってるデッキが相手でも、問題になるようなカードに対しては生贄効果でどうにでもなるしね。

このデッキのクロックパッケージ(Cursed Scroll、Nether Spirit、Mishra’s Factory)にとって重要なのは、自分はお互いに作用する対称的生贄効果を好きなだけ使える一方で、相手の除去カードは擬似的に無駄カードになるということなんだ。

Liliana of the Veil:
非常識なカードだよね。最高の手札破壊除去スペルであり、最高の除去スペルであり、一度場に出るやゲームを支配するための最高の手段になるんだ。



レガシーメタゲームにおけるPox
完全に練り上げられたレガシーのPoxデッキは、スタンダードやエクステンデッドでは活躍できないだろうね。Blade Splicer、Kitchen Finks、Nest Invaderなどのカードは、このデッキにとって大きな問題になるから。幸い、これらのカードはレガシーでは使用に耐えない。つまり、Poxは今のレガシーのメタゲームに合っているってことだね。

手札は何枚?
2枚。でもすぐにSnapcaster Mageで墓地のカードを使うから気にしないで!
土地は何枚?
2枚。$250もするんだよ!
クリーチャーは何体?
5/6のTarmogoyfが1体!これだけあれば十分だよね!
じゃあSmallpox・・・

レガシーってフォーマットは、速度が速く、少ない土地・少ない手札・1体だけのクリーチャーで勝とうとするデッキで溢れている。リソース否定デッキにとっては最適な環境だよね。
Poxデッキは、クリーチャーの攻撃で勝とうとするデッキなら、どんなデッキが相手でも簡単なんだ。
WGB Junkが相手だとミラーマッチみたいだけど、相手の除去カードは役に立たず、相手のクリーチャーカードは処理するのがとても簡単だ。
Delver of Secretsデッキが相手だともっと簡単で、こっちのライフを20点から削り切るだけのバーンカードの枚数も無ければ、こっちの除去を掻い潜って場に残せるだけのクリーチャーカードの枚数も無い。

この後一年間の変化の中でもPoxデッキが優位だなんて約束はできないけど、今のメタゲームだとPoxは素晴らしいデッキだよ。
レガシーで、自分は好きなカードをプレイしながら対戦相手にはカードをプレイさせないのであれば、Poxが最も適しているだろうね。

コメント

74AE
2012年2月9日9:49

翻訳お疲れ様です。
良記事過ぎたのでURL貼らせて頂きました。

rain
2012年2月9日22:20

ありがとうございます。
昔Poxを使っていた身としては、Poxerが増えてくれると嬉しいところ。
(しかしPoxは1枚ww)

キム兄@つけ麺シンドローム
2012年2月13日18:41

翻訳記事いつも参考にさせていただきています。
よろしければリンクお願いいたします。

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